2025年4月、表参道のTear’s Galleryで開催された
「Arobe」様の2025年秋冬展示会にて、
空間装花を担当させていただきました。
今回の展示会のテーマは、
柔らかく洗練されたArobeの
コレクションに合わせて
「今に息づく、和の美しさ」。
空間全体に漂う静謐な空気を壊すことなく、
むしろその雰囲気を支えながら、
来場者の記憶に残るような
“和の情景”をつくることを意識しました。
メインに据えたのはアヤメ(菖蒲)。
その凛とした佇まい、
まっすぐに立ち上がる姿は、
Arobeが描く知性と芯の強さを
感じる女性像と自然に重なります。
花言葉は「あなたを信じる」「優雅な心」。
それ自体が持つ静けさと品格に、
今回の空間づくりのヒントがありました。
床面には白砂や流木、苔、和の器をあしらい、
まるで現代の“床の間”のような世界観を構築。
花器には竹筒や黒磁のベースを使用し、
縦のラインを活かして奥行きと
立体感を出しています。
色彩はあえて抑えたえんじ、
白、紫を基調にすることで、
秋冬らしい深みと落ち着きを加えました。

空間の中で特に印象的だったのは、
マネキンの足元に広がる
この“花の庭”に、来場された方が
自然と引き寄せられていたこと。
服を見るために訪れた方々が、
立ち止まり、スマートフォンを
構えてシャッターを切っていく。
その様子を見て、
装花がただの装飾ではなく、
ブランドの世界観に
新たな“奥行き”を与えていることを
実感できた瞬間でした。
洋服と花は、
素材も目的も異なる存在ですが、
それぞれが語る物語が響き合ったとき、
空間全体がひとつの
作品のように感じられる——
そんな関係性をつくるのが、
私たちフローリストの
仕事だと思っています。
今回の展示会装花は、
あくまで“引き算”を意識しながらも、
決して地味にならないように、
所作のような美しさを
丁寧に織り込んでいくことを
大切にしました。
華やかさではなく、
滲むような余韻を残す。
それがArobeという
ブランドに相応しいと感じたからです。
花という一瞬の美しさが、
空間に静かな存在感を与える。
その瞬間に立ち会えたこと、
そしてブランドの世界に
そっと寄り添えたことを、
心より嬉しく思います。
この出会いをきっかけに、
今後もファッションやアートと
花をつなぐ装飾に、
より深く取り組んでいきたいと
思っています。
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